きみょうなすい星がこわれていく
2022年8月2日

  天文学者は、太陽に近づくまではすい星っぽくなかった、きみょうなすい星が、太陽のえいきょうを受けてばらばらにこわれてゆくようすを、地上の望遠鏡では初めて撮影(さつえい)しました。すい星323P/SOHOは、太陽探査機ソーホー(SOHO)によって発見されたすい星の一つです。地球が毎年太陽の周りを回っているように、このすい星は、約4.2年の周期で太陽の周りを回っていて「周期すい星」といわれる天体の1つです。太陽のすぐ近くを通る周期すい星は、今のところ少しだけしか発見されていません。何かの理由で太陽に近づくときにこわれているのでしょうか? 太陽の近くで何が起きているのでしょう?

  太陽系にあるほとんどすべての天体は、メリーゴーランドのように一定の軌道(きどう)を通って太陽の周りを何度も回っています。しかし小わく星のような宇宙の岩石は、近くの大きなわく星の重力によって今までの軌道から「追い出される」ことがあります。そのような天体は太陽に近すぎる軌道をまわることになり、最後には太陽に落ちて死んでしまうこともあります。しかもまぶしい太陽に非常に近いところを通るため、それらを見つけて観測することはとても難しいのです。

  そのような天体についてもっとよく知ろうと、国際的な天文学者グループが、ハワイ、マウナケアにある日本のすばる望遠鏡やそのほかの望遠鏡を使って、すい星323P/SOHOの観測を始めました。しかしその観測はかんたんなことではありませんでした。すい星の軌道がよくわかっていないため、天文学者たちはどこを探したらよいのか、その正確な位置を知ることがとても難しかったからです。

  しかしうれしいことに、すばる望遠鏡にとりつけた広い範囲(はんい)を一度に観測できるカメラを使って初めにこのすい星を見つけ、天文学者たちはそれを利用してほかの望遠鏡を正確に向けることができたのです。その結果たくさんの望遠鏡から太陽に近づくすい星323P/SOHOの貴重なデータを集めることができました。

  観測結果を見て天文学者たちはおどろきました。なぜって信じられないほど面白いことを発見したのですから。左側の写真のように太陽に近づくまでは点として見えていたすい星でしたが、太陽からはなれていくときは、右側の写真のようなチリでできた長い尾(お)が見えたのです! このような長い尾ができる原因は、ちょうど熱湯をかけられた氷のかたまりがとけるように、太陽からの放射エネルギーがすい星をこわしているのではないかと天文学者たちは考えています。そう考えると、太陽に近づいたときに周期すい星に起こることや、こわれていく理由、そしてなぜ今までほとんど見つかっていなかったのかなどの疑問に説明がつくのです。

  今回の観測では、すい星323P/SOHOが非常に速く自転していることや、太陽系のどの天体ともちがうとても不思議な色をしていることがわかりました。しかし太陽に近づくすい星ならば、どれも同じような色に見えたり、同じような性質をもっているのでしょうか? そしてどのすい星も似た運命をたどるのでしょうか? これらの疑問は天文学者たちにもまだよくわからないナゾです。その答えは今後の太陽に近づくすい星のさらなる観測によって解き明かされていくことでしょう!

画像解説: 左の写真は2020年12月21日にすばる望遠鏡が撮影(さつえい)した近日点に向かうすい星323P/SOHO。点として中央に見えています。右の写真は同じすい星を 2021年2月11日に カナダ-フランス-ハワイ望遠鏡が撮影したもの。近日点を通過した後、細く長い尾がのびています。
画像提供: すばる望遠鏡/カナダ-フランス-ハワイ望遠鏡(CFHT)/ハイ・マンタォさん/デビッド・ソーレンさん。

参考サイト > マウナケア天文台群が捉えた太陽に接近する彗星の崩壊への道のり

知っ得ダネ

  すい星323P/SOHOが地上の望遠鏡でとらえられたのは今回が初めてでした。この観測に参加した望遠鏡には、ハワイにあるすばる望遠鏡、カナダ-フランス-ハワイ望遠鏡(CFHT)、ジェミニ北望遠鏡、アリゾナ州にあるローウェル・ディスカバリー望遠鏡、そしてハッブル宇宙望遠鏡などがふくまれています。

This Space Scoop is based on a Press Release from NAOJ .
NAOJ

この記事は日本の国立天文台の報道発表によります。

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