ちりの毛布の中に銀河がかくれている
2021年9月24日

科学の発見というものはたくさんの骨の折れる仕事をして、情報を注意深く調べてようやく生まれるものですが、時には幸運がいい結果を運んでくれることもあります。何か探し物をしている時にぐうぜん他のものを見つけたラッキーなできごと。そんなことがあなたに起こったことはありませんか?

実際にそんなことが国立天文台と早稲田大学の札本 佳伸(ふだもと よしのぶ)博士に起こったのです。南米チリのアルマ望遠鏡がとらえた、遠くにあるまだ幼い銀河のデータを調べている時に、予想していなかったいくつかの電波放射を見つけました。それらはどう見ても何もない空っぽの宇宙空間からやってきた電波でした。

ところが天文学者のチームがもっとくわしく調べたところ、そこは空っぽの空間ではなく、それどころか二つのものすごく若い銀河があることがわかりました!ぶ厚いちりの毛布にかくれて今まで見えなかったこれらの銀河、光では見えなくても電波では見えたので思いがけず発見されたのです。

これらの銀河は、宇宙が今の年れいの5%ほど(つまりできて8億年ころの)のとても若い時に生まれました。この「宇宙の初めのころ」にはこんな銀河がもっとたくさんあったと考えられています。 天文学では宇宙の遠くを見ることはつまり遠い昔を見ることです。光のスピードには限界があるので(光はものすごい高速で進みますが、無限に速いわけではありません)私たちが調べる宇宙が遠ければ遠いほど、それは誕生に近い幼い宇宙を見ることになるのです。科学者たちはその点をとても重要だと考えています。なぜなら宇宙の幼年期をよく知ることは宇宙物理学の正確なモデルを作り上げることに必要だからです。そして銀河がどのくらい速く成長して、その中で恒星(こうせい)が誕生するのかを知るためにも、とても重要です。

これはすごい発見です。初期の宇宙で五分の一の銀河がまだかくれたまま見つかっていないことになるかもしれないのです。現在アルマ望遠鏡を使って、ちりのぶ厚い毛布の中の幼い銀河を探しています。それはあの史上もっとも感度の高いハッブル望遠鏡でさえ見つけられなかったものです。アルマ望遠鏡は今年打ち上げられるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とタッグを組んで幼い銀河探しをしていきます。すごいですね!

画像:中央の画像はかくれていた銀河が発見された場所をハッブル宇宙望遠鏡が撮影したもの。右の赤と青の画像はアルマ望遠鏡がとらえたデータをもとにした想像図。

写真提供:アルマ望遠鏡(ヨーロッパ南天天文台、日本国立天文台、アメリカ国立電波天文台)

国立天文台による日本語サイトあり

https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20210923-alma.html

知っ得ダネ

現在大規模探査プロジェクト(REBELS)という大きな探査プロジェクトのもとで天文学者たちはアルマ望遠鏡を使い、幼い宇宙の中にある40個の銀河を調べています。40個もの赤ちゃん銀河が見つかるんでしょうか?次のニュースが待ちきれないですね。

This Space Scoop is based on a Press Release from NAOJ .
NAOJ
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