宇宙の毛布にくるまれた赤ちゃん星
2021年12月7日

天文学者たちがつい最近、天の川銀河の銀河円盤の最もはしっこの領域で炭素をふくむ複雑な分子の毛布に包まれた赤ちゃんの恒星(こうせい)を発見しました。複雑な有機物の分子、つまり生物の材料と同じ種類のものです。今まで考えられていなかった場所でも有機物ができているようで、私たちの宇宙で起きている化学反応は、想像以上に豊かで複雑であることがわかりました。

日本と台湾の研究チームがチリのアルマ望遠鏡を使って銀河のはしっこの領域WB89-789という星形成領域にある生まれたばかりの恒星を観測している時に、その恒星が濃い分子の材料に包まれているのを発見しました。その材料を作っている分子には炭素、酸素、窒素(ちっそ)と硫黄(いおう)がさまざまな組み合わせでふくまれていることがわかりました。

私たちが知っている通り、これらの原子はすべての生命の形作るブロックのようなものです。天文学者が他の惑星(わくせい)に生命を探す時に、実際に探すのはこれらの原子のいろいろな組み合わせでできている分子ガスを探すのです。たとえば水の分子なら水素原子2つと酸素原子が1つ、つまり化学記号でH2Oです。

この研究チームは6つ以上の原子からなる有機物、たとえばエタノール(C2H5OH)、メタノール(CH3OH)、プロパンニトリル(C2H5CN)などを発見しました。これらの分子は銀河の内部の領域ではよくありますが、はしっこの領域で見つかったのは初めてです。そこは太陽系の近くとはまったくちがう環境なのです。

天文学者たちは私たちの天の川銀河のはしっこは今も140億年前の銀河形成のころのなごりを残している場所だと考えています。にもかかわらず、そこでもすでにそういった分子が豊富だったとなると、生命の材料となる分子は後になってできたものではなく、宇宙の初期から早くに準備されてきたのでしょうか?ひょっとすると有機物ができたのはそれほど「最近の」のことではないのかもしれません。けれどもまだ、これが天の川銀河のはしっこの領域にもありふれたとくちょうなのか、それとも珍しいものなのか、つきとめなければなりません。

いつの日かこれがもしよくあるものだと判明したら、それは宇宙の歴史のなかで複雑な有機物がどのようにできてきたのかについて、何を私たちに教えてくれるのでしょうか?

画像:イラストレーターの描いた天の川銀河のもっともはしで発見された生まれたての星

クレジット:新潟大学

国立天文台による日本語サイトあり

国立天文台による日本語サイト

知っ得ダネ

複雑な有機分子はおよそ40億年前、地球がまだできたばかりのころに降り注いだ小惑星(しょうわくせい)やいん石にのってやってきたと考えられています。

This Space Scoop is based on a Press Release from NAOJ .
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